最近、アパート経営をするクライアントさんから外壁を修繕する費用は経費計上できるのかという相談を受けることがありました。この修繕費の経費計上は頻出の論点なので、いい機会なので自分なりにまとめてみました。
この記事では、修繕に掛かった費用を経費として計上できる場合とそうでない場合について解説します。この記事の最後には判定フローチャートを記載していますので、結論だけ早く知りたいという方はそちらをご覧ください。
修繕費は経費として全額を一括計上できると思われている方は多いと思います。しかし、修繕の内容次第では修繕費としては認められず経費として全額を一括計上できない場合があることはご存知でしょうか?
修繕費とは、機械や建造物、備品、車などの固定資産が故障した時の修理代や、所有するビルの設備に対する定期的な保守点検の費用や外壁の塗装費用などを処理する勘定科目です。リース契約によって導入している機械の修理やメンテナンスにかかる費用を処理する際も修繕費を使用します。
具体的には以下のようなものを指します。
・維持管理費用
・メンテナンス費用
・車検費用
・解体費用
・原状回復費用
・パソコン修理費
・保守費用
・点検設備費
これら修繕費は基本的に経費として一括計上することができます。
修繕に掛かった費用は経費として計上できない場合があります。なぜそのようなことが起こるかというと、修繕費として認められる範囲は通常の維持管理や修理のために支出されたものだけであり、修繕の対象物の価値を高める場合は範囲外となるからです。
例えば、マンションをリフォームするとマンションの資産価値を修繕前に比べて高くなります。その場合は、リフォームに掛かった費用の内、資産価値を高めた部分は修繕費の範囲外となります。この部分は、税法において修繕費ではなく資本的支出とみなされます。
資本的支出とは、修繕することによって修繕対象物の「資産の使用可能な期間を延長」させる、もしくは、その「資産価値を増加」させる場合に発生する費用のことを指します。資本的支出の場合は、固定資産として取り扱い、減価償却して数年に渡って経費計上していくことになります。修繕費とは異なり修繕に掛かった費用全額をその年の経費とすることができません。
資本的支出は下記の計算式で求めます。(資産の使用可能な期間を延長させる場合)
仮に、取得時の耐用年数が40年、経過年数が15年のマンションを改修した際に、1,200万円の費用が掛かったとします。改修後の新たな使用可能年数が30年だとすると修繕費として計上できるのは1,000万円、残りの200万円は資本的支出となります。
修繕費として計上できるのか、それとも資本的支出も含めて計上しなければならないのかの判断ポイントは大きく2点です。
・原状回復、維持のための費用か?
・「資産の使用可能な期間を延長させる」or「資産価値を増加させる」費用か?
より具体的な判断基準については以下の判定フローチャートにしたがってください。
修繕費として経費計上できる場合と計上できない場合についてフローチャート付きで解説しました。現状維持のための修繕であればその費用は基本的に全額経費計上できます。一方で現状の資産価値をより高めるであろう修繕は資本的支出つまりは固定資産として数年に分けて減価償却する必要があります。修繕費か資本的支出かの判断は上記のフローチャートに従えば大方は判別できると思います。もし、それでも判断が難しいと思われる場合は、税理士などの専門家にアドバイスを受けることをおすすめします。