消費税のリバースチャージ方式について調べる機会があったので、まとめました。
リバースチャージ方式の説明をする前に、まずは消費税における納税の仕組みについて説明します。
消費税の納税は、主に「消費者が事業者に対して支払った消費税額を事業者が個人に代わって国に納税する」というものです(免税事業者の場合は納税する必要はありません)。
事業者は課税売上に伴って発生する消費税(消費者から一時的に預かっている消費税)から課税仕入で支払う消費税額を差し引くことができます(仕入税額控除)。控除額は年間の課税売上および課税売上割合に応じて以下のように変わります。
※全額控除できない場合は控除額を個別対応方式もしくは一括比例配分方式によって控除額を算出します。(両方式の詳細は後ほど説明します)
商品やサービスの提供事業者が国外の事業者である場合は、その事業者から厳密に消費税額を徴収するのは困難です。こういったことから、2014年の消費税法の改正によって、国外事業者による電気通信利用役務(インターネットを通じたサービス)の提供を受けた国内の事業者に限り、消費税は国外事業者からではなくサービスを利用する国内事業者から徴収することになりました。(ここでいうインターネットを通じたサービスとはインターネットを介した広告の配信やアプリなどの販売場所を提供するサービスなどを指します。)この場合は、サービスを利用した国内事業者が消費税の申告・納税しなければなりません。
これをリバースチャージ方式といいます。
図でわかりやすく説明すると以下のようになります。
リバースチャージ方式は、サービス提供事業者が納税すべき消費税をサービス受容側の事業者が納税しているところが大きな特徴です。
ただし、国外事業者から提供されるWEBサービスの利用料すべてに対してリバースチャージ方式が適用される訳ではありません。
以下の2つの条件を満たした場合に初めて適用されます。
1. 一般課税で課税売上割合95%未満の事業者である
2. 事業者向けのサービスである
詳しく解説します。
納税しなければならない事業者の課税売上割合が95%未満の場合はリバースチャージ方式が適用されます。課税売上割合とは、その名の通り売上に占める課税対象の売上割合を求めたものです。95%以上の場合は、全額控除となるため、消費税の納税義務は発生しません。これは最初に説明した課税仕入の税額控除と同じ話で、課税売上割合が95%以上の場合は全額控除になることに起因します。
課税売上割合を求めるためには、まず以下の2つの売上を理解しておく必要があります。
この2つの売上を含めて全体に占める課税売上割合を下記の計算式で算出します。
課税売上、非課税売上および免税売上は対象事業年度を期間とします。95%以上の場合は、支払った消費税の全額が控除できます。一方で、95%未満の場合(リバースチャージ方式の場合)は個別対応方式もしくは一括比例配分方式によって仕入税額控除額を確定した上で納税額を算出します。それぞれの方式の控除額の求め方は以下のようになっています。
仕入税額控除額を明らかにしたら、消費税額から差し引くことで納税額を明らかにすることができます。
例えば、10万円のサービス利用料を支払った場合の納税額を計算してみましょう。(消費税は10%、課税売上割合は80%、仕入税額控除の算出方式は一括比例配分方式とする。)
消費税額:10万円 × 10% = 1万円
仕入税額控除額:1万円 × 80% = 8,000円
納税額:1万円 − 8,000円 = 2,000円
この場合は2,000円の納税を行う必要があります。
国外事業者からインターネットを通じて提供されるサービスを利用するというのは、リバースチャージ方式が適用される上での大前提です。その上で、そのサービスが事業者のみを対象にしたものなのか、消費者も対象にしたものなのかでリバースチャージ方式が適用されるかどうかは変わります。
消費者も対象にしたサービスならば、リバースチャージ方式は適用されません。しかし、事業者向けのサービスと判断される場合はリバースチャージの適用対象となります。最も有名なところでは、Googleの広告配信サービスであるGoogle AdwordsやFacebookの広告配信サービスなどがそれに当たります。
事業者向けでなければリバースチャージ方式は適用されません。この場合は仕入税額控除ができません。ただし、サービス提供側の国外事業者が登録国外事業者※1に該当する場合は仕入税額控除ができます。
事業者向けかどうかの判断基準は、一般の消費者も利用可能なサービスなのかどうかが判断ポイントと言われています。しかし、Google Adwordsなどのように一般の消費者が利用可能であってもリバースチャージ方式の対象になる場合があります。また、iTunesやApp Sotoreと言った国外企業が提供しているサービスでも運営は国内法人が行っている場合もあるので税務署や税理士と言った専門家に確認すべきでしょう。
※1: 登録国外事業者とは電気通信利用役務の提供を行う国外事業者で、かつ国税庁長官の登録を受けた事業者を指します(該当する国外事業者はこちらから確認できます)。
最後にリバースチャージ 方式に関するYes/Noの判定フローチャートを作成しました。リバースチャージ方式が適用されるかどうかを判断する際に役立ててください。
リバースチャージ方式は複雑な制度なので理解するのに時間を要します。しかし、理解できていないと税務調査で申告漏れが明らかになり、延滞税などを払わされることで本来よりも多くの税金を払うことになるでしょう。そうならないためにリバースチャージ方式の仕組みを理解することで申告漏れにならないように注意しましょう。